犯罪抑止という大義名分のもと、子供向けの工作ナイフで
鉛筆削りも兼ねていた肥後守のような「利器」までもが
さしたる議論も経ず、ある種の全体主義のなかで「凶器」として
排除されていったことは、再検証の必要があるだろう。
運動学や情操教育に用いられるデータに『スキャモンの発達発育曲線』
という有名なグラフがある。
人間は5歳ぐらいまでに運動機能を含む神経回路の80%が形成され
12歳頃にはほぼ完成するという。
その時期にどれだけ身体感覚を養い、感受性を育む体験をさせるかで
いわゆる「生きる力」と呼ばれる基礎能力が決まると、このスキャモンという
人類学者は1930年代に論じた。
まさに「鉄は熱いうちに打て」であるが、裏返すとこの発達発育曲線図は
幼い時に手や体を積極的に使う機会がないまま成長してしまうことの危険性
すまわち知識偏重型初期教育の問題を示唆している。
刃物を危険視し、子供から遠ざける風潮のうちは、まだましだったのかもしれない。
利器の何たるかを知らない子供たちは、時を経て子の親になった。
「生きる力の欠落」が、再生産されだしたのである。
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